北欧家具とは?その歴史に迫る
私たちは日常生活で北欧家具に触れる機会が多いですが、その歴史について知る機会は少ないのではないでしょうか。この記事では、北欧家具の魅力とその歴史について詳しく解説します。
北欧と呼ばれる国々
一般的に北欧とは、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンのスカンジナビア3カ国と、フィンランド、アイスランドの5カ国を指します。これらの国々の人口は合わせても約3000万人で、日本の4分の1程度です。
北欧というと極寒の地というイメージがありますが、実際にはメキシコ暖流の影響で比較的穏やかな寒さです。治安も良く、衛生面も整っているため、旅行先としても人気があります。
北欧家具の起源
北欧家具の歴史は、8世紀末から11世紀半ばにまで遡ります。この時代、スカンジナビアにはバイキングが存在しました。バイキングは略奪者というイメージが強いですが、実際には商業活動を行い、故郷に帰れば農民や漁民として生活していました。
彼らは他国から様々なものを持ち帰り、その中には家具も含まれていました。バイキングの造船技術と木工技術を活かし、他国で学んだ家具製造方法を自国に持ち帰り広めていきました。
ルネサンス時代の影響
14世紀にイタリアで始まったルネサンスがヨーロッパを北上し、17世紀には北欧でも建築を中心にルネサンス様式が流行しました。この時代、デンマークの王族や貴族の間でフランスやイギリスから持ち込まれたバロック様式やロココ様式、ジョージアン様式の家具が流行しました。
腕の良い家具職人たちはこれらのスタイルを真似て家具を製作し、王族や貴族に納めていました。当時は北欧オリジナルのデザイン家具はなく、家具デザイナーという職業も存在しませんでした。
モダニズム運動と北欧家具
20世紀に入り、ドイツの総合芸術学校バウハウスを中心としたモダニズム運動がヨーロッパを席巻しました。バウハウスは合理主義と機能主義を掲げ、無駄な装飾を排除し、新たな素材や技術を家具に応用しました。
この運動はデンマークにも波及し、コーア・クリントはデンマーク家具デザインの父と呼ばれるようになりました。彼は過去の伝統と真摯に向き合い、リ・デザインという方法論を確立しました。クリントの家具は人体と家具の相関関係や収納家具のモジュールなどを研究し、効率的なデザインを追求しました。
第二次世界大戦後の北欧家具
第二次世界大戦後、工業デザインの中心はアメリカへと移りました。アメリカは軍事産業から生まれた新素材を用いて大量生産を行い、デザイン性の高い家具を生み出しました。この流れに影響を受けたデンマークのデザイナーたちも、自国の文化や価値観を基盤としたスカンジナビアンデザインを発信し続けました。
1950年代にはアメリカの雑誌でデンマーク家具が特集され、北欧デザインがアメリカに広く知られるようになりました。特にハンス・J・ウェグナーは北欧家具デザインの巨匠として知られ、その作品は世界中で高い評価を受けています。
北欧家具の衰退と再評価
北欧家具は1940年代から60年代にかけて黄金期を迎えましたが、70年代以降は衰退期に入りました。衰退の要因としては、大量生産への移行や、若い世代に受け入れられたカジュアルな家具の影響などが挙げられます。
しかし、1990年代中頃から再評価の流れが始まり、オーガニックでミニマルな北欧デザインの魅力が再び注目されるようになりました。2000年代に入ると、インターネットやメディアを通じて北欧インテリアが世界中に広まりました。
現代の北欧家具
現代においても、北欧家具は世界中の優秀なクラフトマンたちによって受け継がれています。素材やフォルムへの探求心、人々の暮らしに対する深い愛情、そしてリ・デザインの精神が、今日の北欧家具を世界中に広めました。
これからも北欧家具はその魅力を失うことなく、多くの人々に愛され続けることでしょう。
最後に、ハンス・J・ウェグナーの言葉で締めくくります。「人生でたった一脚の良い椅子をデザインできるか。それは到底無理な話だよ。」
この記事を通じて、北欧家具の魅力とその歴史について理解を深めていただけたでしょうか。これからも暮らしに関わる興味深いコンテンツをお届けしていきますので、ぜひご期待ください。